Hermes Agent 使い方|知られていない15の便利機能
Hermes Agentの使い方を調べていると、ほとんどの解説が「Telegramで動かしてチャットする」までで止まっています。実際は永続メモリ・スラッシュコマンド・100+の組み込みスキル・17プラットフォーム配信など、踏み込めば踏み込むほど業務に効く機能が詰まっています。本記事ではHermes Agentの中でも特に見落とされがちな15の便利機能を、Claude Code利用者の視点で整理します。
Hermes Agentが「賢いChatGPT」で終わっている人が多い
Hermes AgentはNous Researchが2026年2月に公開した、自己進化型のオープンソースAIエージェントです。基本概念やOpenClawとの設計思想の違いについては別記事で整理していますので、まだの方はそちらを先にご覧ください。
本記事はその後の話、つまり「インストールして動かしたあと、何を触れば真価を発揮するのか」に絞ります。きっかけは、Hermes Agent利用者のSharbel氏(@sharbel)がX上で投稿した次のような問題提起でした。
「ほとんどの人はHermes Agentをインストールして、賢いChatGPTのように扱っている。Telegramを繋いで、モデルを指定して、リクエストを送って、応答を受け取って、ウィンドウを閉じる。それで終わりだ。もしあなたがそうなら、Hermesがやれることのおよそ8%しか使えていない」
— Sharbel氏(@sharbel)のX投稿より
「8%」という数字は感覚値ですが、私もClaude Code利用者として共感します。Claude CodeでもCLAUDE.md・Skills・Hooksなど一歩踏み込んだ機能を使い込んでいるかどうかで、出力品質と作業速度がまったく別次元になります。Hermes Agentでも同じ構造があるはずです。以下、私が読んだ限りで「これは触らないと損」という15機能を整理します。

多くの人が見落とす「設定」4機能
1. /personality + SOUL.md|エージェントの人格を1ファイルで固定する
Hermes Agentは起動時にSOUL.mdという1ファイルを読み込みます。ここに書いた内容がエージェントの声・拒否事項・想定読者として、すべてのセッション・プラットフォーム・バックエンドにわたって永続的に効きます。/personalityコマンドで、定義済みの複数の人格をセッション中に切り替えることもできます。
毎回「あなたはシニアの○○エンジニアです」とロール指定する手間がなくなる、という意味でこれはClaude CodeのCLAUDE.mdに相当する設計です。違いはCLAUDE.mdがプロジェクト規約と制約を書く場所であるのに対し、SOUL.mdはエージェントの人格そのものを定義する点。役割を明確に分離しているのがHermes Agentらしさです。
2. MEMORY.md + USER.md|プロジェクト知識と個人情報の3層分離
Hermes Agentがすべてのセッション開始時に読み込むファイルがもう2つあります。
- MEMORY.md:プロジェクトについての真実をエージェント自身が書き込むノート
- USER.md:あなた個人の役割・トーン・コンテキスト・トレードオフ嗜好を保持する
SOUL.mdと合わせると、人格・利用者・案件の3軸でファイルが分離されている設計です。すべてFTS5+LLM要約でインデックス化されており、Sharbel氏によれば「8週間前のメモリでも今のセッションに引き出せる」とされています。
私はClaude CodeでCLAUDE.md(プロジェクト規約)/rules/(横断ルール)/data/(案件知見)を分けて運用していますが、これに近い思想です。ファイル単位で責務を切り分けることで、AIに何を見せるかをコントロールしやすくなります。
3. /insights|全セッションの分析を一発で見る
/insights 30と打つと、過去30日間に走らせたすべてのセッションを横断して、どのプロジェクトがトークンを最も消費したか、どのプロバイダがいくらかかったか、エージェントが詰まったポイントはどこかを可視化してくれます。
Claude Codeの/usageダッシュボードと役割が近いですが、Hermes Agentは「セッションごとの停止理由」まで分析対象に含めている点が興味深い。何度も同じ場所で詰まるなら、そこがハーネス改善のポイントです。
4. /snapshot|エージェント本体のロールバック
/snapshotはHermes Agentの設定と状態をまるごと保存し、後から/snapshot restore <id>で復元できる機能です。SOUL.mdを大きく書き換える前に取っておけば、失敗しても元に戻せます。
これはClaude Codeにない仕組みです。私は普段、CLAUDE.mdをgit管理することで同じ目的を達成していますが、Hermes Agentはエージェントそのものに対するgit的な機能をビルトインで持っている。AIエージェントの設定を試行錯誤する文化が、ツールレベルで前提になっているのが面白い設計です。
進行中のセッションを制御する4機能
5. /branch(/forkエイリアス)|セッションを分岐させる
長く積み上げた会話の途中で「ちょっと別のアプローチも試したい」と思ったとき、新規セッションを始めるとそれまでのコンテキストが消えてしまう。/branchは現在のセッションをコピーして別の枝を作る機能です。リスキーな手を試して、ダメなら元の枝に戻れます。
会話に対するgitのbranch相当。Sharbel氏は「ほとんどの人は新しいセッションを始めて、積み上げたコンテキストを毎回失っている」と指摘していました。これも納得です。
6. /rollback|ファイルシステムのチェックポイント
エージェントが破壊的な編集をしてコードを壊した、というときに使うのが/rollbackです。Hermes Agentはエージェントが触ったすべてのファイルのチェックポイントを保持しているため、git addする前の状態でも復元できます。
Claude Codeにはこれに相当する機能はなく、私はgit stashやgit restoreで対応しています。Hermes Agentの/rollbackは「git管理されていない作業ディレクトリでも安全」という意味で、特に非エンジニア利用者にとって安心材料になります。
7. /btw|コンテキストを汚さない脇道質問
セッション中に「ちょっと確認したい」だけの質問をするとき、メインの会話を汚さずに使えるのが/btwです。セッションのコンテキストは参照するが、ツールは呼ばず、結果は永続化されません。
これはClaude Codeにも同名の機能があります。私は普段、過去の指示を確認したいときに/btwを使っていて、人間側の記憶のブレを防ぐ目的で頻用しています。Hermes AgentとClaude Codeで同じコマンド名・同じ目的というのは偶然ではなく、両者がスラッシュコマンドUIの設計思想を共有している証拠です。
8. /steer + /queue|進行中のタスクに割り込む
長い自律タスクを実行中に「あ、本番APIじゃなくてステージングだった」と気づくことがあります。実行を止めて最初からやり直すのはコストが高い。/steer use the staging API not prodと打つと、現在のターンは中断されず、次のツール呼び出しからその指示が反映されます。プロンプトキャッシュが温かいまま継続できる点が大きい。
/queueは次のターンを先回りして指示しておく機能です。組み合わせると、エージェントを止めずに方向修正できます。
私はClaude Codeで似たことをしたいときはEscで割り込んで指示しますが、その都度プロンプトキャッシュが温度を失います。/steerのようにキャッシュを保ったまま割り込めるのは、長時間タスクが多いユーザーには大きなメリットです。
パワーモードとプロバイダ選択
9. /yolo, /fast, /reasoning|デフォルトを抜け出す3つのトグル
多くの利用者がデフォルトのまま使い続けているという3つのトグルがこれです。
- /yolo:すべての危険コマンド承認をスキップ(取扱注意)
- /fast:OpenAI Priority ProcessingやAnthropic Fast Modeに切り替えて低レイテンシ化
- /reasoning:oシリーズ等の推論モデルの推論努力レベルを調整
Claude Codeの/fastと発想は同じです。ただしHermes Agentはモデル不問なので、OpenAIのPriority APIにも切り替わるのが特徴。プロバイダ非依存なので「速いほうを使う」が自然に選べます。
10. /model|プロバイダを横断的にスイッチ
/model anthropic:claude-opus-4-7でOpus 4.7、/model openrouter:kimi-k2.6で安価なオープンモデルへ、というように、再起動なしで裏のモデルを切り替えられるのが/modelです。Anthropic・OpenAI(Codex GPT-5.5はOAuth経由でAPIキー不要)・OpenRouter・NVIDIA NIM・Kimi・Gemini・AWS Bedrock・Vercel AI Gateway・Xiaomi MiMo・Step Plan・Arceeなど、対応プロバイダは多数。
これはClaude Codeにはない自由度です。私はOpus 4.7に統一する方針を取っていますが、それはClaude Code環境という制約の中での最適解にすぎません。Hermes Agentのようにプロバイダ自由度が高いと「単純作業はKimiに、難所はOpus」のようなタスク粒度でのモデル使い分けがそのまま実装できます。
11. 補助モデル|メインと脇役を別モデルに
エージェントが裏側で行っている作業は、メインの応答生成だけではありません。コンテキストの圧縮、セッションの要約、タイトル生成、画像処理など複数の脇役タスクがあります。Hermes Agentはこれらに対して個別のモデルを割り当てられるのが大きな特徴。
たとえばメインはOpus 4.7、要約圧縮はHaiku 4.5、タイトル生成は更に小さなモデル、というように振り分けられる。「Opusの単価でHaikuグレードの仕事をさせない」という観点でコスト最適化が効きます。
17プラットフォーム接続と音声
12. 17プラットフォームへの一括配信
Hermes AgentがTelegram・Discord・Slack・WhatsApp・Signal・Email・SMS・Matrix・Mattermost・Feishu・WeCom・DingTalk・BlueBubbles・Home Assistant・QQBot、加えてCLIと音声まで対応していることをご存じでしょうか。hermes gatewayを起動すると、1つのHermesプロセスから全プラットフォームに配信できます。
許可ユーザーをDMでペアリングし、チャネルごとにレート制限を設定することも可能。チームが普段使っているメッセンジャーがバラバラでも、Hermes Agentを介して統合的にAI機能を提供できます。
13. /voice|4プラットフォームのリアルタイム音声
CLI・Telegram DM・Discordチャネル・Discord音声チャネルでリアルタイム音声入出力が可能です。/voiceと打って話しかけるだけ。歩きながら、運転中、キーボードから離れているとき、つまり「タイピングのほうが遅い場面」では音声入力のほうが速い。
私はClaude Codeを使う場面では外部サービスのAqua Voiceを使っていますが、Hermes Agentはこれをエージェント側に統合してしまっている。エージェント自体が音声を一級市民として扱っているのは、業務での実用シーンを想定した設計です。
自動化(cron + webhook)
14. 自然言語cron + /webhook-subscriptions|双方向の自動連携
Hermes Agentは自然言語で書けるcronスケジューラを内蔵しています。「毎週金曜17時に、今週のGitHubコミットをまとめてSlackの#standupsチャネルに投稿」と書けば、Hermesがパースして無人実行し、結果を指定先に届けてくれます。
逆方向も可能で、/webhook-subscriptionsを使うと外部サービス(GitHub・Vercel・Stripe・稼働監視)からのwebhookペイロードを直接DMにpushできます。これはLLMコストもレイテンシもゼロ。トークンを使わずに通知を受け取り、必要なときだけエージェントに相談する設計です。
Claude Codeでも/loopや/scheduleで定期実行ができますが、外部からのwebhook受信は標準では持っていません。Zapierや別ツールを噛ませる必要がある領域です。Hermes Agentがここまで内蔵しているのは、メッセンジャー連携を中核に置いている設計上の必然と言えます。
スキルがすべてスラッシュコマンド
15. 100+の組み込みスキル+自作スキル
Hermes Agentには100以上のスキルが標準搭載されており、すべてスラッシュコマンドとしてオートコンプリート可能です。例を挙げると次のとおりです。
- 図解系:
/architecture-diagram(SVGアーキテクチャ図)、/excalidraw(手書き風図)、/manim-video(3Blue1Brown風アニメ) - 業務系:
/linear(Linear課題管理)、/google-workspace(Gmail/Calendar/Drive/Docs/Sheets)、/imessage(テキスト送信)、/youtube-content(YouTubeから記事化) - 開発系:
/test-driven-development(RED-GREEN-REFACTORの強制)、/systematic-debugging(4フェーズの根本原因分析) - 委譲系:
/codexと/claude-codeで他のエージェントにタスクを委譲
そして自作スキルが書けます。Sharbel氏の例では/sageという独自スキルを作っていて、Xでのトレンド検知から投稿草稿の生成まで、自分の声で日次バッチ処理させているとのこと。一度書けばすべてのプラットフォーム上で永久に使える、というのが強みです。
Claude CodeのSkillsとほぼ同じ概念です。私もSEO記事生成・noteの自動投稿・PDF生成・画像生成・スライド生成など、業務全般をSkill化しています。両者の違いは命名規則と実行環境ですが、「業務を関数化して呼び出す」という基本思想は共通です。

Claude Code利用者が今すぐ試せる対応
15機能を眺めてみると、Hermes AgentとClaude Codeは同じ問題を別の角度から解いているように見えます。両者を使い分けるのではなく、設計思想の共通点を活用して自分のClaude Code運用を強化するほうが、中小企業にとっては現実的です。
同名・類似機能で確認できる共通設計
/btw:両ツール共通。コンテキストを汚さない一時質問- MEMORY.md:両ツール共通の永続メモリ命名
- Skills(コマンド):両ツール共通。業務をスラッシュコマンドで関数化
/fast:両ツール共通。低レイテンシモード

Hermes Agentにあって参考になる設計
- SOUL.md/USER.md/MEMORY.mdの3分離:Claude Codeで言えばCLAUDE.md・rules・dataの責務分離。改めて整理する材料になります
- /snapshotでエージェントごとロールバック:Claude Codeではgit管理で代替できますが、「設定そのものをバージョニングする」という発想は意識すべき
- /steerで進行中タスクに割り込み:Claude Codeでも同じ目的でEsc割り込みは可能ですが、キャッシュ保持の観点で改善余地あり
Hermes Agentならではの機能
- 17プラットフォーム配信+ /voice:Claude Codeはローカル中心の設計なので、メッセンジャー統合・音声統合はHermes Agent側のほうが進んでいます
- /webhook-subscriptions:外部サービスからのpush通知をLLMコストゼロで受けられるのは大きい
- プロバイダ横断の/model切替:Claude Codeはモデル選択の柔軟性で劣るため、コスト最適化を極めるならHermes Agent優位
中小企業視点での活用ヒント
「個人開発者向け」と割り切るのが正しい
Hermes Agentの15機能を見ると、全体的に個人開発者・小規模チームの繰り返し業務を最適化する方向に設計されています。介護施設や建設会社の業務フローにそのまま導入するのは現時点では困難です。
そう割り切った上で、経営者個人や事業の中核担当者の生産性を上げる用途には十分にハマります。「経営者のセカンドブレイン」「専属の自動化アシスタント」という位置付けが現実的です。
私が実際に試すならこの順
- SOUL.mdとUSER.mdを書いてみる:人格と自分の情報を1ファイルにまとめる思想を理解する
- /branchと/rollbackを試す:エージェント運用にgit的な感覚を持ち込む
- 1つだけ自作スキルを作る:日次の繰り返し業務を関数化してみる
- cron + webhookで自動配信を組む:「自分が寝ている間に動く」体験を作る
このうち1〜3はClaude CodeでもCLAUDE.md・git・Skillsで再現できます。Hermes Agentを実際に動かさなくても、同じ思想でClaude Code側を整えるだけで効果は出ます。
まとめ|「8%」を抜け出すために
Sharbel氏が指摘した「Hermesがやれることのおよそ8%しか使えていない」という言葉は、AIエージェント全般に共通する課題を端的に表しています。インストールしてチャットするだけなら、それは賢いLLMフロントエンドであって、エージェントではありません。
Hermes Agentの15機能を眺めてわかるのは、エージェントを使いこなすとは「設定ファイルを書き、コマンドを覚え、自動化を組み、自分の業務を関数化すること」だという事実です。これはHermes Agentに固有の話ではなく、Claude Codeでも同じです。
もしHermes Agentを今から導入する余力がなくても、Claude CodeでCLAUDE.md・Skills・MEMORYの運用を整えることで、まったく同じ効果が得られます。本記事の15機能は、Hermes Agentそのものよりも「育てるAIエージェント」を運用するためのチェックリストとして読んでいただくのが最も実用的です。
AIエージェントの活用は、入れて終わりではなく、入れてから始まります。残りの92%を取りに行くかどうかで、半年後の業務品質が大きく分かれるはずです。
御社の業務に合わせたClaude Code導入支援
「AIツールを導入したが、現場で使われない」を終わらせる。
業務課題のヒアリングから設計、ハンズオン実践、運用定着まで一貫して支援します。