職員10人以下の介護事業所でもできるIT化|低予算で始める3つのステップ
介護テクノロジーの導入は小規模事業所にこそ必要です。しかし「うちのような小さな事業所には関係ない」「予算がない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
利用者150人・スタッフ50人規模のデイサービスでiPad+AI記録システムを開発し、月100時間の業務削減を達成した経験があります。その中で見えてきたのは、IT化の恩恵は大規模施設よりもむしろ小規模事業所のほうが大きいということです。
この記事では、職員10人以下の介護事業所が低予算で始められるIT化を3つのステップに分けて解説します。
なぜ小規模事業所ほどIT化が必要なのか

職員10人以下の事業所は、一人ひとりの業務負担が大きくなりがちです。介護記録、請求業務、シフト管理、ご家族への報告——すべてを少人数でこなさなければなりません。
大手施設なら事務専任のスタッフを置けますが、小規模事業所ではケアと事務を兼務するのが当たり前です。その結果、記録業務だけで1日1〜2時間を費やしているケースも珍しくありません。
さらに、2024年度の介護報酬改定ではLIFE(科学的介護情報システム)への対応が強化され、データ入力の負担はますます増えています。少ない人数でこの負担を乗り越えるためには、IT化による効率化が不可欠です。
Step1:紙の記録をタブレットに置き換える
なぜ紙からの脱却が最優先なのか
IT化の第一歩は、紙の記録をタブレット入力に切り替えることです。「いきなりAIを導入しよう」と考える方もいますが、それは失敗のもとです。まずは記録のデジタル化から始めましょう。
紙の記録の最大の問題は、同じ情報を何度も書き直す「転記作業」です。手書きメモ→日報→月次報告書→ご家族への連絡帳。同じ内容をフォーマットを変えて何度も記録するのは、はっきり言って時間の無駄です。
タブレットに記録すれば、データは一度入力するだけで済みます。日報にも月次報告にも同じデータを使い回せるため、転記ミスもなくなります。
低予算で始めるタブレット導入のコツ
「タブレットは高い」というイメージがあるかもしれませんが、実際にはそれほどコストはかかりません。
- iPadの場合:最も安いモデルで約5万円。中古なら2〜3万円で十分使えるものが手に入ります
- Androidタブレットの場合:1〜2万円台でも実用レベルのものがあります
- 記録アプリ:無料〜月額数千円で使えるものが多数あります
小規模事業所であれば、タブレット1〜2台+記録アプリで初期費用10万円以内でスタートできます。
補助金も活用できる
2025年度は介護テクノロジー導入支援事業(予算規模200億円超)やIT導入補助金が利用可能です。小規模事業者の場合、補助率が2/3になる枠もあり、実質負担を大幅に抑えられます。各都道府県で実施状況が異なるため、お住まいの地域の補助金情報を確認してみてください。
Step2:記録の自動化で転記をゼロにする
「入力は1回だけ」の仕組みを作る
タブレット入力に慣れてきたら、次は記録の自動化に取り組みましょう。具体的には、1回の記録入力で日報・月次報告書・家族への報告書が自動的に生成される仕組みを作ることです。
私が手がけた介護施設では、まさにこの仕組みを構築しました。iPadから入力された日々の記録データをもとに、日報のフォーマットに自動で整形し、月末には月次報告書の下書きが自動生成される。さらに、ご家族への報告書の下書きまで自動で作成されます。
この自動化だけで、記録関連の業務時間が約半分になりました。
小規模事業所向けの自動化方法
自動化の方法はいくつかあります。
- 介護ソフトの機能を使う:カイポケやほのぼのNEXTなど、主要な介護ソフトには帳票の自動出力機能があります。まずは現在お使いのソフトの機能を確認してみましょう
- スプレッドシート+関数:Googleスプレッドシートの関数や条件付き書式を使えば、簡易的な自動集計が無料でできます
- カスタム開発:事業所独自のフォーマットや業務フローに完全に合わせたい場合は、カスタム開発が最適です
どの方法を選ぶかは、事業所の規模と予算次第です。小規模事業所なら、まずは既存ソフトの機能を最大限活用するところから始めるのがおすすめです。
Step3:AIを活用してさらに効率化する
AIでできること・できないこと
Step1・Step2が定着したら、いよいよAIの活用です。ここで重要なのは、AIに何を任せて、何を人間が判断するかを明確にすることです。
AIが得意なこと:
- 記録テキストの要約・整形
- 定型文の自動生成(報告書の下書きなど)
- 音声からテキストへの変換
- データの集計・分析
AIが苦手なこと(人間がやるべきこと):
- 利用者の微妙な体調変化の判断
- ケアの優先順位の決定
- ご家族とのコミュニケーションにおける配慮
- 記録内容の最終確認
AIはあくまで「下書き」を作るツールです。最終的な確認と判断は必ず人間が行います。この線引きを明確にしておくことで、現場のスタッフも安心してAIを使えるようになります。
小規模事業所でのAI活用の具体例
小規模事業所でもすぐに始められるAI活用の例を紹介します。
- ChatGPTで報告書の下書き作成:日々の記録をコピー&ペーストして「月次報告書の形式にまとめてください」と指示するだけ。月額3,000円程度で利用可能
- 音声入力で記録時間を短縮:スマートフォンの音声入力機能を使えば、キーボード入力の2〜3倍のスピードで記録できます
- 議事録の自動生成:カンファレンスやミーティングの録音をAIで文字起こしし、要約まで自動化
Fyveのカスタム開発なら小規模事業所にも対応
「汎用ツールでは対応しきれない」「うちの事業所に合った仕組みがほしい」という場合は、カスタム開発が有効です。
私たちFyveが手がけた介護施設向けのAI記録システムでは、iPad+AI記録の組み合わせで月100時間の業務削減を実現しました。このノウハウを活かし、小規模事業所の予算感に合わせた開発も対応しています。
大手のパッケージソフトとの違いは、事業所の業務フローに合わせてシステムを作るという点です。ソフトに合わせて運用を変えるのではなく、運用に合わせてシステムを作る。だからこそ、現場のスタッフが無理なく使いこなせるものになります。
IT化を成功させるための3つのポイント
最後に、小規模事業所がIT化を成功させるために押さえておくべきポイントをまとめます。
1. 一気にやらず、段階的に進める
Step1→Step2→Step3の順番が重要です。紙からタブレットへの移行が定着してから自動化に進み、自動化が回り始めてからAIを導入する。各ステップで最低1〜2ヶ月の定着期間を設けましょう。
2. 現場のスタッフを巻き込む
IT化を決めるのは経営者ですが、実際に使うのは現場のスタッフです。「なぜIT化するのか」「どんなメリットがあるのか」を丁寧に説明し、スタッフからのフィードバックを積極的に取り入れてください。
3. 完璧を求めない
最初から100点のシステムを作ろうとしないでください。60点でいいから早く始めて、使いながら改善していく。この「小さく始めて育てる」という姿勢が、IT化成功の最大の秘訣です。
まとめ
職員10人以下の小規模事業所でも、低予算でIT化は実現できます。
- Step1:紙の記録をタブレットに置き換える(初期費用10万円以内)
- Step2:記録の自動化で転記作業をゼロにする
- Step3:AIを活用してさらに効率化する
大切なのは、一気にすべてを変えようとせず、段階的に進めることです。小さな成功体験を積み重ねることで、スタッフの抵抗感もなくなり、自然とIT化が定着していきます。
「うちの事業所でも本当にできるのか」「何から始めればいいかわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。小規模事業所の実情に合わせた、無理のないIT化プランをご提案します。
